「それは正しい。でも…」——納得したはずだけど、何かおかしい。【第2話:こころのメモ⑤】
『正論』だと、なぜか反論できなくなってしまう——そんな経験はありませんか?
「『夫婦のことは夫婦で解決すべき。お前は病気じゃない。他力本願になるな』って言われて…」
「正論」という名の見えない支配
真里奈が「カウンセリングを受けたい」と伝えると、一蹴した夫。一見「正しい」ように聞こえるその言葉に、私は戦慄しました。
でもその「正しさ」には、支配的な関係を強める巧妙な仕組みが潜んでいます。
「夫婦のことは夫婦で」
外への助けを断ち、孤立を深めさせます。多様な視点に触れられず、ますます支配者の考えだけになり、それが「正しく」思えるようになります。
「病気じゃない」
苦しみを打ち消し、切り捨てています。繰り返されることで、自分の感覚を信じられなくなっていくーーこれは、「ガスライティング」と呼ばれています。
「他力本願になるな」
自立心に訴え、孤立を強める強力なフレーズです。自立したい人ほど、この言葉に弱く、言い返せなくなります。
「自分で選んだ」はずだったのに
そして、最も巧妙なのが、真里奈が「自分で選んだ」と信じていたこと。
「だから、コーチングをお願いしたんです。私は病気じゃないし、前向きなコーチングの方があってると思ったし」
真里奈は「自ら最善策を選んだ」つもりでした。でもその選択肢は、すでに夫によって狭められていたのです。
「もしバレても大丈夫かな、と…」
この一言に、すべてが表れています。
たとえ夫が知っても、被害は最小限に抑えられる…つまり、夫の意向に沿わないと、「安全」だと感じられない。真里奈の本音が現れた言葉です。
「正しさ」には、支配関係を見えにくくする力があります。被害者は「自分で選んでいる」と思いながら、無意識に相手の期待通りに動くようになるのです。
その選択は、本当に「自由」ですか?
あなたが“自由”だと思っているその選択——それは本当に「自由なもの」ですか?真里奈は、夫の正しさに翻弄され、心が『しぼんだ風船』のようになるまで我慢してしまいました。
それでも、“助け”を求めてくれた——それが、何よりの希望でした。