「自分でやりたい」が言えなくなった日;第1話【こころのメモ②】
消えていく『私の声』
「一度だけ、『これは自分でやりたい』って言ったことがあるんです。勇気を出して…でも、夫はただ一言、『ダメだ』と。…それっきりで」
真里奈の声が途切れたとき、私は彼女の心境を想像し、心が痛みました。
自分の仕事を「自分でやりたい」
ごくごく当たり前の願い。でも、それを夫に伝えるのに勇気が必要だった。そして、その勇気が一瞬で砕かれた。そういう彼女と夫の関係性。明らかな力の差。
外からは対等に見えても、決定権はいつも夫にあるのかもしれない。
優位に立ちたいとの思いがあると、相手の「自立心」は脅威として映ります。「ダメだ」という一言の背後には、「君には無理だ」「俺がいないとできない」という暗示が隠されています。
これが繰り返されるうちに、 「言っても無駄だ」 「お任せした方が楽だ」と諦めの気持ちが育っていきます。
真里奈のように、もう一度勇気を出そうとしても、心の奥で「どうせダメだ」との思いが先立ち、そのうち、やりたい自体を感じなくなってしまいます。
あなたの「やってみたい」「自分でやりたい」は、どこにありますか?
小さな声でまだ囁いているかもしれません。
それとも、もう聞こえなくなってしまったでしょうか?
でも諦めないでください。その声はまだ、あなたの中にあります。
どうか、少しだけ耳を澄ませてみてください。
小さな「やりたい」が、あなたの中でまた息を吹き返しますように。